インタビュー – 養老牛 山本牧場

標準化されてない牛乳、
養老牛放牧牛乳の価値を伝えたい__

"世界 NO.1 シェフが養老牛プレミアムプリンに込めた熱さ"

Profile

小山シェフ Profile

1964年京都生まれ。2003年兵庫県三田市に「パティシエ エス コヤマ」をオープン。「上質感のある普通味」を核にプロフェッショナルな味を展開し続けている。16年には12歳以下のお子様しか入れないお店「未来製作所」が、「キッズデザイン賞:協議会会長賞」を受賞。フランスの「C.C.C.」のコンクールでは、2011年の初出品以来、7年連続で最高位を獲得。

2017年10月にロンドンで開催されたインターナショナル・チョコレート・アワーズ 2017・世界大会では、24作品が受賞(金賞4品、銀賞11品、銅賞9品)。また、17年11月13日には敷地内に新たなブランドとなるデコレーションケーキ専門店「夢先案内会社 Fantasy Director(ファンタジー・ディレクター)」をオープンした。

山本牧場の牛乳をお使い頂いている小山シェフへのインタビューを掲載させていただいております。

出会ったきっかけを教えてください。

「ワイルドミルク」という名前に惹かれたのが最初です。「なぜ“ワイルドミルク”という名前なのか?」ということが気になって理由を聞いたときに「牛のエサとなる草は時季によって青草と干草に分かれていて、どちらの草を食べたかによって牛乳の味が変わる。」ということを知りました。「エサが変わって牛乳の味が変わる季節にまた飲んでみてください。」と言われ、次の季節が来るのを楽しみにしてたのを覚えています。当時は“蛇口を捻れば牛乳が出る”と言うとちょっと大げさですが、それに近い状況が自分の子供や周りの環境にも見受けられるように感じていました。チョコレートの原料となるカカオなども同じことで、「そういう状況は本来、普通ではないんだよ」ということをお菓子を通じて伝えるのが僕たちの仕事だと思い始めていた時期だったので、そのタイミングで出会えたことも大きかったです。

小山シェフの食材・素材へのこだわりをおしえてください。

自分が美味しいと思うかどうか、がまず第一ですが、美味しいものと出会って「この素材を作っている方に会ってみたい」と思う場合と、面白い人に出会って、その方が惚れ込んで『こんなものを創っています』とおっしゃっているのを聞いて「この方が作られているものを食べてみたい」と思う場合があります。

僕の場合はだいたいそういうところからモノづくりがスタートすることが多いです。作られている方の熱意や魂が宿っているもの、“着地が見えているモノづくり”をされている方が作られるものは絶対に絶対に美味しい。美味しいものには、その方の考え方が絶対にあります。創作者が真剣に魂を込めてモノづくりしているものにとても惹かれます。

安定して量を生み出せるものの素晴らしさというのももちろんありますが、「これだけしかなくって」とか「一年の中でも、味が変わってくるんです」といった、「希少価値のあるもの」「易々とは標準化できないもの」に惹かれます。今の世の中は標準化されているもので溢れていますから。

僕は「世の中すべてに供給できるものでなければならない」という時代を経て、今の時代があると思っています。だから、時代の進化やテクノロジーの進歩に伴って「本来それってそういうものではなかったよね」という大事なところが失われているものが増えているように思います。そうではなくて“大事なものが損なわれていないもの”が好きですね。ニンジンは本来、どういう味が美味しいニンジンなのか、ホウレンソウってどういう味が本当に美味しいのか。また、実際に自分自身がそれをわかっているのか。そう考えることがあります。しかし出会いとか発見とか、そういうことを繰り返しやっていると「本来これってこういうものだったんだ!」というものに出会えるんです。そこには美味しい理由がちゃんとある。逆にそうじゃないものが何故できるのかも理由が分かるようになってきます。

価値ありきで「この価格に合わせよう」と思えば、そうせざるを得ないという部分があるのも理解できます。しかし僕たちは価格だけではモノは買いません。ワイルドミルクも普通の牛乳として使わせていただいていたら、一本いくらのプリンになってしまうのか、という話です。「それでも紹介したい」という思いがあれば「ギフト商品として考えよう」という発想が生まれるわけです。そういう商品のあり方を考えると『ギフト』とは本来どういうものを言うのか?とギフトに対してもあり方を見直すことができます。「紹介したい」という思いは創り手にも買い手にもある、ということです。そういう想いから生まれた商品は「高いけど、人に贈りたい商品」になるわけです。ここを分かってくださる方はものすごく少ないかもしれません。でも世の中には分かってくださる方が必ずおられるのです。僕たちはそういう“創り手も買い手も紹介したい”と思うものを使わせていただいている、その意識を持ってモノづくりをしていかなければならないと思っています。

何の素材として使用して頂いていますか?

【ワイルドミルク、それぞれのお味について】

●青草の緑ラベル・・・・・・青草から摂取される水分やカロテンによって、うまい表現が見つかりませんが“グリーン”が大きく宿っている。乳脂肪分が少なく、爽やかな後口

●干草の赤ラベル・・・・・・醗酵・熟成した干草からくる甘味・旨味、脂肪分が増えていることによる味の分厚みや濃厚さが、冬の季節にピッタリ。

確かに、今までもさまざまなお菓子に使用してきた牛乳も、ここまで季節感をはっきり感じたことはなく、単に「牛乳」ではなく、牛乳も季節感のあるものだということを改めて認識させてもらいました。また、山本さんが「今年も冬をよく乗り越えられたなぁ、頑張ったなあ、と毎年思う」「寒い冬を堪えた牛が出すミルクは格別だ」ということをおっしゃっていたことがかなり印象に残っています。そういうコメントを聞くと牛乳を出してくれている牛の生活のことも考えるようになり、青草の時期が来たら牛の気持ちになって「いい季節になったなあ」と思うようになりますし、牛が感じているであろう清々しい気持ちも、ぷりんの味でしっかり表現したくなります。

あらためて考えると、夏場に味わえる緑ラベルの牛乳も、脂肪分が低くなり夏にちょうどよいサッパリとした味になり、人間が夏場にサッパリとしたものが恋しくなる生理現象と合致していて、冬場はその反対に濃厚な味が恋しくなりますが、牛も濃厚な味の牛乳を出してくれるという、自然界のサイクルと人の生理現象が合致しているということもすごいことだなあと思います。

この牛乳の良さを引き出すのも、「この味にはこれが合う」という考え方ではなく、チョコレートも似たような面があるのですが、糖分を加えることでその味わいを引き出す、という考え方で、「養老牛プレミアム 小山ぷりん」を創っています。そうすることで、その牛乳の味がよりはっきりと分かるようになるのです。

今後の展望や山本牧場の関わりについてコメントをお願い致します。

当たり前のこととして厳しい自然と闘いながら牛乳を提供してくれる牛の状況や、その牛たちを育てている酪農家の思い。そんなことを感じながらその素材を使ったプリンを食べる、というのは今の時代ある意味幸せなことなんだと思います。普通に食べられるプリンは世の中にはたくさんありますから。僕たちは牛乳を作ることはできませんが、美味しい牛乳を出してくれる牛と、その牛たちを魂を込めて育ててくださっている酪農家の方とタッグを組むことはできます。これはすごいことなんですよ。僕たちは素材を組み合わせて一つのお菓子を創り出すわけですが、ともすると創り手がメインのようになってしまいがちです。でもこのプリンは牛と酪農家の方がメインなんだと強く感じます。牛乳の味を最大限に引き出した味づくりをしていく上では、その大部分を牛と酪農家の方々にゆだねているわけですから。牛と自然、そして生産者の方から頂いたギフトをどう正しく使うか。それが僕たちに与えられた仕事です。これが本来の“自然を相手にしたモノづくり”である、ということがお客さまにも伝わればいいな、という思いを込めながら、これからも日々創作を続けていくつもりです。

養老牛 山本牧場のFacebook 養老牛 山本牧場のInstagram 養老牛 山本牧場のオンラインショップ